2024/06/26 22:16
ド・スタールは1914年、ロシア・ペテルスブルグに生まれた。
ロシア革命の後、ド・スタール一家はポーランドへ亡命。そこで両親があいついで没した。
この孤児はブリュッセルの母の知人の下で養育され、そこの美術学校をでたのち19才のときパリへ出た。
長い貧乏暮らしの後、次第に作品が認められるようになり、やがて画家として余裕のある生活ができるようになったが、突然自殺。41歳であった。
故国喪失者はどこの国の市民権を得ようとも、心情的には絵画という幻影の世界の住民というほかない。
そして、この幻影の世界は現実社会と衝突することによって、その脆弱で不安定な姿をみせてしまう。
芸術家としてこれ以上いきることができなくなっても、それを庇護するような力は、どこにも存在しないからである。
ド・スタール 「ふね」1955
アザン社刊(仏)プリント シートサイズ59.5×79.3cm