2024/06/26 22:12


ジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』は、当時二十代半ばの自分を揺るがし茫然自失の状態にさせた。あの時の気持ちは今も忘れ難い。

わたしは大学で法学部卒、生命保険会社社員というごく普通のサラリーマンの生活から一企業家への道へと転身。脱サラという言葉も耳新しい時代、地元の神戸新聞に一度取材を受けた。

その一年後、追跡取材があり、絵を手にする僕の写真と「脱サラ見事に成功」のナンセンスな見出しには、流石に内心動揺をおぼえた。

 

この自分の無手法さは会社も家族も友人も只あきれるばかり。だが退職の挨拶に伺った専務取締役にだけ、「それも大いに結構頑張りなさい」と言われたことが今も忘れられません。

 

ゴダール監督の作品は、既成の映画とは全く異質のもので一種の反映画でさえあるとの批評もあった。『勝手にしやがれ』についてこれ以上の言質はふれないが、詳細はいま手元にある本の一部を紹介するにとどめたい。

 

現代のシネマ1「ゴダール」ジャン・コレ著/竹内健訳 三一書房

「ゴダールの世界」R・ラウド 柄谷真佐子訳 竹内書店AL選書

「ゴダールと女たち」四方田犬彦著 講談社現代新書

「何が映画を走らせるのか?」山田宏一著 草思社

「シネマの快楽」蓮見重彦+武満徹 河出文庫