2024/06/22 20:46
ロートレックは「印象派の画家たちが、いくらジャポニズムと日本熱に取りつかれても外見的なことだけで、絵の中に日本の衣装をもちこんだり日本趣味をただ楽しんでいるだけ。
それでは日本の美を理解したことにはならない」と考えた。
日本の浮世絵の特徴は何か。それは鮮明な色の面と平面的表現、さらに黒くて細い線描の縁取り。それに一品制作の絵画と版画の違いもある。
ロートレックは「日本の真似ではなく木版に対しフランスでは石版だ!日本の役者や遊女に対し、西洋には歌手、俳優などの芸人だ。」と言った。
つまり、ロートレックはただの真似事ではなく母国の石版技術を使ってジャポニズムを表現したらよいではないか、と言っていたのだ。
その思考の結論はポスター制作の突破口となる。
ロートレック 「ディヴァン・ジャポネ」(日本の長椅子)1892-93年
アザン社プリント イメージサイズ32×46cm、
シート価額¥880(税込)
ロートレック 「ジャンヌ・アヴリル」1893年
アザン社プリント イメージサイズ45×64cm
シート価額¥1,320(税込)
ジャンヌ・アヴリルは有名な人気の高い踊り子、ポスターの
左上の踊り子が彼女、右下の演奏者の持つコントラバスの
さおの上下部で枠に沿って額縁状になっている。
この枠がアール=ヌーボー調の曲線を表しており、演奏者の
頭部の髪の毛の曲線もこれまたアールヌーボー調だ。
アヴリルのダンスの瞬間が見事に表現され、優雅にして大胆
な構図の中にとけこんでいるのだ。
ロートレック 「ジャンヌ・アヴリル」1899年
アザン社プリント イメージサイズ46.3×68.3cm
シート価額¥1,320(税込)
私がこのポスターの実物を偶然目にしたのは、母と食事をしに
マキシム(三ツ星のレストラン)東京店にはいった時のことだった。
店内に数点飾られていた中の一点がロートレックのこの作品
だったのだ。
この店は完璧なロココ調のしつらえであることでも有名だった。
その雰囲気の中でこの作品は、目をやった瞬間に迫ってきたのを
いまでも思い出す。その絵が最高の環境のうちに吐息するのを。
なぜそんな贅沢なところで食事をしたのか、それは母がさる大学
の調理学の教授で、その体験学習のつもりだったのかも。